手編み

子育てに必死の姉が合間を縫って私に赤い帽子を編んでくれた。
少し前に買い物に出かけたときに私が欲しがったものと同じもの。
姉は意固地になっていろいろと自分を否定するが、
小さなころから創造的で器用だった。
何か作ろうと思い立つと、作り方を調べて材料を調えてたいてい一晩で作ってしまう。
それでいてとても一般に想像される手芸少女のようにメルヘンな乙女ではないし、
どちらかといえば肝っ玉母さん風。できる女である。


決して忘れることができないのが、私が手術のために入院したときに創ってくれた私の姿かたちをした小さなフェルト人形。
姉の優しさと愛情と純真な励ましと。美しい思い出である。


そういえば小学生の姉が授業の一環で創った絵本もとても面白くかわいらしかった。
私はいつも姉が授業で経験する物事を見聞きして記憶してしまっていたので、
いざ自分の番になると、姉の真似事をするか、姉とかぶらないように工夫を凝らして
結果的に奇妙なものをつくりだしてしまうかで、どちらかといえば逸脱してしまうことが多かったように思う。


同じ両親から生まれて、同じように育ってきたのに、私と姉とではまるきり180度違う人間になってしまった。
けれど仲が悪いわけでもなく、これはこれで面白いことだと思う。